「水曜に取り寄せたお酒で土日(週末)を楽しむ」がモットー(志向)。
毎日をゆるく生きる水取 日土志の緩ライフを毎週ゆる〜くご紹介。

さて、今週はどんな緩ライフを過ごしているでしょうか……

今週の晩酌酒 vol.61

春酒/ヤエガキ式/花巴 山廃純米吟醸うすにごり 無濾過生原酒

古くて新しい感動の槽搾り!
空気を味方につけた新生「花巴」



むだむだむだむだむだむだむだむだァーー!!

いきなり、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の
名言シーンからの出典。
こんばんは、ディオ・ブランドー(DIO)です。
なんちて冗談。
今日は出だしから訳分かんないことこの上なし。
あいすまんことにて候ろう。

念のため説明しておくと、
DIO君の使う「むだ」とは「無駄」のこと。
「無駄無駄……」と音を繰り返しながら
無数のパンチを繰り出すことで圧倒的な力を誇示し、
相手の戦意を削ぐことに役立つ活用です。

ただ、オイラが伝えたい「むだ」は
「無駄」じゃなくて「六田(むだ)」。
六田六田六田六田六田六田六田六田ァーー!!
つまるところ「六田」とは何か……

「The 地名!」

その名は歴史ある奈良・吉野に見つけることができる。
では問題! そんな六田の地で、
風土に根差した“腑に落ちる”酒造りを行う
孤高のブリュワーと言えば……?

「誰?!」

誰って、この人だよ。
ワインのごとく自由自在に「酸」を
コントロールするスペシャリスト、酸の魔術師、
美吉野醸造蔵元・橋本 晃明杜氏。

して、その醸す酒は……?
ハナトモエ!



春酒/ヤエガキ式/花巴 山廃純米吟醸うすにごり 無濾過生原酒
(はなともえ)


720ml はこちら 1800ml はこちら   

マジでそうさ!
花巴さん「今週の晩酌」約1年振り2度目の登場さ。
お久しぶり! ご無沙汰!

昨年紹介した花巴は、
原始的な乳酸発酵の作用を生かした古代の製法と、
いわゆる貴醸酒の醸造法を組み合わせて造る
「水もと×水もと」で、
かがた屋酒店でも大変人気だったそうだが、
今年の売れ行きはそれ以上というから恐れ入る。

激アツな造りだってことを皆さん良くご存じのようで
オイラの出る幕なんかないねぇ……。
とまあ、そう言わんと今回もしばし
お付き合いください幕張マッセ。

さて、銘酒・花巴からの新しい刺客について。
今回の造りは「水もと」ではなく
ご存知「山廃もと」である。うん知ってる。
但し、聞き慣れない「ヤエガキ式」なるワードが
商品名に入っている。何それ?! 気になる。

だば、一緒に勉強!




まず、「ヤエガキ式」とはお酒の搾り方のことであるらしい。
ほほう。
じゃあ他にはどんな搾り方があるかというと、
現在メジャーな日本酒の搾り方は大きく2つに分かれる。
「薮田(ヤブタ)式」と「佐瀬(サセ)式」だ。

薮田式は空気圧を用いてお酒を搾る
「薮田式ろ過圧搾機」を使用する。
アコーディオン状の構造をしていて、
連結するフィルターに醪(もろみ)を入れ、
機械で圧搾する。

あまり空気に触れさせずに搾ることも可能なため
直汲み等、ガス感のあるフレッシュなお酒を
得ることもできるメジャーな搾り機だ。




次に佐瀬式。
醪(もろみ)を布袋ひとつ一つに手作業で入れ、
槽(ふね)と呼ばれる台、というか
浴槽みたいな虚ろになった槽に
底から頑張って並べて積み上げたら、
上からゆっくりと圧力をかけて搾る槽搾り法。

小さな袋に入れる作業は大変だが、
こちらのメリットは空気に適度に触れることで
炭酸ガスも抜け、まろやかな酒質になること。
それと、時間をかけ、
必要以上の圧力をかけずに搾るため、
贅沢な部分のみを取り出すことになる。

なんとここで、
かがた屋酒店スタッフの船長(通称)さんが
分かりやすいイラストを描いてくれたので
以下参考されたし。




ふむ。字はアレだけど分かり易くてありがたし!
この「薮田(ヤブタ)式」と「佐瀬(サセ)式」を踏まえ、
本題、八重垣(ヤエガキ)式。

佐瀬式や袋吊りで搾る際に醪(もろみ)を入れる袋とは異なり、
「大布」と呼ばれるふとんのシーツばりに大きな
板状の袋にポンプで醪を注入する。

その上に「矢板」と呼ばれるアルミ板を乗せ、
また大布、矢板と積み上げていく。
八重垣という名の通り、幾層にも重ねるのだ。
層の数は蔵によってマチマチだが、花巴は現在30段。
比較的大きな「大布」を用い、
原料米500kg以下の小仕込みのときにしか使用しないという。

ちなみに使う矢板の材質も蔵によって異なり
ステンレス製や木製のものもあるようだ。




搾り方は単純明快。
搾り始めは自重に任せ、
2日目以降はジャッキを使い
上から丁寧に圧力をかけて搾っていく。

この搾りは自重と人力を利用した
古いやり方で、佐瀬式に似ているが、
佐瀬式との違いは、より空気に触れるという点だ。
理由は以下の通り。

まず、大布は板状で大きいため、
醪が空気に触れる面積が必然的に広くなる。

次に、その袋から染み出たお酒は、
矢板を伝い、徐々に槽へしたたり落ちていく。
この間最も空気に触れる。

何故ならヤエガキ式は、
槽の中で搾るのではないため、
空気を遮断する外壁がないのだ。

つまり、わざと酸化を促す槽搾り法と言えよう。

こうしてみると八重垣(ヤエガキ)式の上槽は、
フレッシュでフルーティなお酒が尊ばれる
昨今の風潮からはおそよ敬遠される槽搾り法に思える。
だって酸化が進むわけでしょ?!
そんな中、花巴が敢えて導入したことにも
理由があるらしいのだが……




実のところ橋本杜氏はこれまで、
自蔵の新酒が硬いと感じていたという。
多種多様な酸の表現を得意とする花巴だが、
同蔵の基幹にある「酸を抑制するのではなく、
酸を開放する」酒造りに起因するものであろうか。

さらに原料米をこれまでの長野県産「ひとごこち」から
奈良県は吐田(はんだ)の地元契約農家さんが栽培する
「五百万石」で醸したいと考えたことも大きな要因だ。

県内の生産者と共に歩む酒造りに転換し
テロワールを表現していこうというわけだが、
五百万石は淡麗なお酒を造るのに好まれる品種。
以前と同様にマスカットのような果実味ある
ニュアンスが引き出せるか、こちらも心配の種となった。

これらの課題や不安はヤエガキ式によって払拭されたのか。
早く飲みたいところだが、マミツーも準備!



ツナマヨとアスパラとゆで卵のチーズ巾着

皆〜んな大好き!
なモノを閉じ込めたハッピーな巾着袋。
お弁当にこんなの入ってたら、
お昼のテンションMAXよね。

「母上ーーー〜〜〜〜〜〜!!」

いきなりノスタルジック。
何歳になってもオイラ、母上の子だ。
などと郷愁に浸っている場合ではない。
ヤエガキ式の真価を見届けなば。まずは一献!

「スーーーーーーッ」
っと入ってきた。角がない、アタックがない。
アタックナンバーワン・鮎原こずえはどこへ消えた?
この引っ掛かりのなさは事件! 抵抗のなささ加減!
含み香はまさしくマスカット。
果実味は気品に溢れ、程よい甘味と酸が渾然一体となり、
早春の風のように鼻腔と味蕾をくすぐって駆け抜ける。

「ウマスギ式部!」




これがヤエガキ式の威力か。
勝手だけど、山廃ってもっとふくよかで
重みを伴うイメージがある。
対してこいつは“どぎつい”まろやかさだ。
飲み口は全然きつくないんだけど笑

なんというか、搾ったお酒が矢板を伝い、
したたり落ちていく過程で、
一滴一滴が空気と会話し、意見を取り込み、
健やかな人間へと成長していったイメージ。

やっぱり刑事は足を使わなきゃならないってことさ。
捜査の基本は現場周辺の聞き込みよ。
ベテランから学んでこそ新しい発見があり、
新しい挑戦ができ、新しいものが生み出せる
ってわけさ。

おっと、説教かい?! 耳が痛いね。
と、冷めちゃう前に巾着だ。




ひと口食べると想像斜め上の濃厚さ。
並ぶのはマック(マクド)のダブチか
宅配ピザかってぐらいのパンチ力。
そこにアスパラ独特の風味と食感が
しゃっきり清涼感入れてまとめ上げる。
こんがり焼けたお揚げの香りが
食欲そそりまくりまクリスティーでね。

すかさず花巴で追っかけると
乳製品チーズ由来の脂質や酸味、
ツナマヨの酸味なんかとマリアージュして
ベールに隠れてた花巴の酸が顔出すと同時に
混然一体グルーヴィンしてしばし陶然となる。

カロリー高杉晋作だが、まあいいか旨いから。
というわけで今週は、
「空気に触れるのは無駄じゃない!
ウマスギヤエガキで
こくまろグルーヴィンウマックス!」





花巴は、吉野の発酵食文化と共にある酒造りを
目指す中で、「自然淘汰と自然共存」の考え方から、
全て「酵母無添加」という答えに行き着いた。

それは
「酸を抑制するのではなく、酸を開放する酒造り」
を命題とするから。

こうした造りといい、
空気に敢えて触れさすヤエガキ式の上槽といい、
実にクラシックで実にモダン……、
モダンクラシックを体現し見事に結実させている。
素敵よね。

いかがでしたでしょうかヤエガキ式という槽搾り法と
ヤエガキ式で搾った新生「花巴」。
ぜひガッキーにも飲ませたい……。
ほしたらばー!




ただでさえ硬くなりがちな新酒を
淡麗向きの酒米で醸すという課題に取り組み
一挙に解決、というか
別次元に昇華させたお酒がこちら。

そして、それを可能にしたものが
古くて新しい“究極”の槽搾り法「ヤエガキ式」です。

“究極”とは何を意味するか。
それは空気を味方につけたこと。
フレッシュさを尊ぶ風潮とは逆行する搾り方ですが、
口に含んだ時の抵抗感のなさ、まろやかさ、
高貴な果実味は驚きの一言。
正解は一つじゃないことを思い知らされました。

文句なしの傑作です。
新生「花巴」、ぜひご賞味ください。

数に限りがあります。
お早目にご注文ください。




日土志が飲んでいるお酒

春酒/ヤエガキ式/花巴 山廃純米吟醸うすにごり 無濾過生原酒

720ml はこちら 1800ml はこちら

今週のつまみ

<ツナマヨとアスパラとゆで卵のチーズ巾着>冷めても美味い。お花見弁当にでも入ってたらば悶死不可避♪



サミットストア 西小山店
〒142-0062 東京都品川区小山6-4-5
 

プロフィール

水取 日土志
(みずとり ひとし)


38歳(男性・独身)。西小山在住。
近所のかがた屋酒店でお酒を買って晩酌するのが一番の楽しみ。
出世するつもりは毛頭なく、職場でもお酒のことばかり考えている。
最近、ウンチクが過ぎて部下にウザがられていることを自覚したのか、
酒屋で仕入れた情報は、もっぱら猫か、かがた屋の新人にだけ話している。
西洋かぶれの一面もある。外見からは想像できないくらいチャーミング。

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